技法について

当ルームでは以下の技法を行います。必要に応じて、技法を組み合わせて行います。

 

  〇 EMDRセラピー

 EMDR ( Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法 ) セラピーは、アメリカのフランシーン・シャピロ博士が開発した、PTSD ( 心的外傷後ストレス障害 ) に対してエビデンスのある心理療法です。さらに、PTSD以外の他の精神科疾患、精神衛生の問題、身体的症状の治療にも適用例が報告されています。

 WHO ( 世界保健機関 ) 、国際トラウマティック・ストレス学会、英国国立医療技術評価機構 ( NICE ) の臨床ガイドライン等で、EMDRセラピーはトラウマ・PTSD治療の方法として推奨されています。WHO ( 世界保健機関 ) は、「PTSD患者の心理的負担が最も少ない治療法」として、EMDRセラピーを推奨しています。

 EMDRセラピーは、方法として眼球運動やその他の両側性の刺激 ( タッピング、聴覚刺激など ) を用いますが、それはEMDRセラピーの構成要素の一部分であり、あらゆる主要な心理療法の側面が組み合わさった統合的治療アプローチです。短時間でトラウマ記憶を処理していくEMDRセラピーのメカニズムは、適応的情報処理モデルなどによって説明されています。

  

〇 早期トラウマアプローチ ( Early Trauma Approach ; ETアプローチ ) 

 早期トラウマアプローチは、O'Shea と Paulsen によって開発されたEMDRセラピーにおける新しいアプローチです。

 ETアプローチでは、発達早期 ( 言葉のない乳幼児期 ) のトラウマ、ネグレクト、愛着 ( アタッチメント ) の傷を処理します。言葉のない記憶 ( 潜在記憶 ) を扱うため、主に顕在記憶 ( 言葉で表されるもの、認知、映像など ) を扱うEMDRセラピーの標準プロトコルが修正されています。   

 ETアプローチでは、情動への働きかけによる過度の苦痛や再外傷を防ぐために、情動回路のリセットを行う、トラウマ処理作業を細かく分ける、発達段階におけるニーズを満たす、などの新たな工夫がなされています。トラウマ処理の準備を行い、両側性の刺激が用いられることは、EMDR標準プロトコルと同様です。

 言葉のない乳幼児期のトラウマ、ネグレクト、愛着の傷をもつ人に対しては、言葉によるセラピーでは限界があると考えられ、ETアプローチはEMDR標準プロトコルを補完し、言葉のない発達早期のトラウマ処理を可能にしたものといえます。

 

〇 ボディ・コネクト・セラピー

 身体感覚に注意を向け、脳 ( 神経系 ) と身体をつなぎ、トラウマのエネルギーを、タッピング、眼球運動、タッチなどを用いて身体から解放し、自己調整力を回復させます。

 

〇 自我状態療法

 自我状態とは、自己の一部あるいは一側面とされています。自我状態にアプローチし、葛藤解決やトラウマ治療を行います。催眠は必須ではありませんが、催眠を併用した方が効果的です。

 

〇 ホログラフィー・トーク

 軽い催眠状態で、自分の内なる声に耳を傾け、感情や身体症状の意味を読み取ったり、問題の起源やその解決法などを見出していきます。

 

〇 マインドフルネス

 マインドフルネスとは、「今ここ」の体験に気づき、それをありのままに受け入れる態度および方法です。現在では、トラウマセラピーとマインドフルネスを統合したアプローチが開発されています。

 

〇 身体の感覚に対する気づきを用いたアプローチ

 トラウマに対する身体感覚を扱います。身体感覚を観察、追跡し、トラウマによって自律神経系に過剰にたまったエネルギーを解放して調整し、トラウマ反応を軽くしていきます。資源 (リソース) の開発も行い、少しずつ安全に進めていきます。